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■背景 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
甑島は、鹿児島県の薩摩半島の西方約30km の東シナ海上に位置し、 上甑島・中甑島・下甑島その属島群で構成される地域で、豪壮な海食崖地形や特異な砂州と潟湖群、リアス海岸など多様な海岸景観を有するとともに、海岸部から最高で標高約600m の稜線部まで照葉樹林が発達するなど優れた自然の風景地で、これらの一部は、昭和56年10月に甑島県立自然公園に指定されています。 その後、甑島周辺沿岸が日本の重要湿地500に、上甑島の海鼠池及び貝池がラムサール条約湿地潜在候補地に選定されるなど、甑島の自然環境は高く評価されています。また、鹿島断崖に見られる『甑島の白亜紀−古第三紀層』が日本の地質百選に、『甑島の鹿の子断層』が日本の地質構造100選に選定されています。 |
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■指定理由 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
・甑島は、次の風景形式の中で、優れた自然の風景を有する地域であるため、国定公園に指定されたものです。また,景観要素と本国定公園の特徴を簡潔に表したテーマは次のとおりです。 ◆風景形式 1)甑島列島形成の過程を物語る多様な海岸景観 2)イシサンゴ類を主体とするサンゴ群集の海域景観 3)南方系、北方系及び満鮮系の多様な植物相が見られる照葉樹林 |
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◆主な景観要素 海食崖、海食洞、岩礁、砂州と潟湖、リアス海岸、多種多様な化石、海岸植生、多島海、照葉樹林、湿地生態系、サンゴ群集 ◆テーマ 太古の地球を感じる宝の島 |
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■公園区域 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
優れた海岸景観を構成する陸域、海岸景観と一体をなす森林地域、希少種の生息が確認されているなど植物の生育地として重要な地域、海岸景観と一体的に海域景観を維持するための海域を公園区域とします。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
■保護規制計画 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
特に自然性が高く優れた景観を有する海岸、希少な野生生物の生息・生育地となっている自然性の高い地域を中心に保護を図ります。また、海岸の汀線から1km の範囲を海域公園地区とし、海岸景観と一体的な海域景観とサンゴ群集が見られる海中景観の保護を図ります。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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★天然記念物 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
■地域概要 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
甑島は、鹿児島県の薩摩半島の西方約30km の東シナ海海上にあって、東経129度39分〜130度0分、北緯31度37分〜31度53分の間に位置し、北北東方向から南南西方向に約35km
にわたって連なる列島で、上甑島、中甑島、下甑島の有人三島とその属島群で構成される。総面積は、117.56km2で、上甑島44.14km2、中甑島7.30km2、下甑島66.12km2となっており、基礎的な地方公共団体は、薩摩川内市である。 上甑島と中甑島の間には、無人島の中島があり、上甑島と中島は『甑大明神橋』と『かのこ大橋』で繋がっています。 また中甑島と下甑島は、2015年3月現在では藺牟田架橋大橋の工事が進行中です。 |
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■景観の特性 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
◆地形・地質の特性 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
海底地形を概観すると、甑島は、天草諸島から続く地形的な高まりが海上に出たものであり、北北東−南南西方向に雁行した2本の横ずれ断層にはさまれた地塁である。そして上甑島、中甑島は、主として上部白亜系及びこれを不整合に覆う古第三系の砂岩、泥岩、砂岩泥岩互層によって形成され、その地形はなだらかな起伏地形である。これに対し、下甑島は堆積岩に加えて大規模な酸性火山岩類や花崗岩類によって標高 約400〜600m の山地が形成され起伏に富んだ地形になっているなど、多様な地質構造を見ることができる。また、平成25年2月には、下甑島の姫浦層群の地層から、白亜紀後期の『草食恐竜ケラトプス類』の歯の化石が発見されている。このケラトプス類のアジアでの生態史および進化史は、まだ明らかになっていない点も多く、これは極めて貴重な発見であると高く評価されている。これに加え、島内ではアンモナイト、二枚貝、ウニ、イノセラムス、カキ、生痕化石など多様な化石類を見ることができ、ここは中生代や古第三紀の地球の息吹を感じることができる。 海岸線は変化に富んでおり、波の浸食を受けて発達した海食崖や波の浸食を受けずに残ったリアス海岸、波の作用で堆積した礫で構成される砂洲などが見られる。特に、上甑島と下甑島の西海岸で発達した海食崖は特徴的で、上甑島では唐船ガト モから境瀬まで約7qにわたって、下甑島では円崎から釣掛崎まで約38km にわたって、高さ100〜200m の断崖が連なっており、奇岩や大岩も数多く点在し、発達した海食洞も見られる。 また、上甑島の北部にあり代表的な景勝地となっている長目の浜は、長さ約4kmにも及ぶ砂礫州が発達している。この砂礫州は、河川性のものではなく、砂礫の分布状態から、北西部の海食崖から砂礫が供給され、縄文海進以降の海面低下に対応して形成されたと考えられている。この砂礫州によりリアス海岸が閉じて、長目の浜では海鼠池、貝池、鍬崎池の3つの潟湖が形成されたものと考えられる。 |
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■植生・野生生物 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
甑島の植生は、かつて里山であったため、スダジイやタブ、マテバシイの二次林が多くを占めている。島全体ではミミズバイ−スダジイ群集、イスノキ−ウラジロガシ群集やムサシアブミ−タブノキ群集などのヤブツバキクラス域の自然植生が点在する。海岸部には風衝低木林のトベラ−ウバメガシ群集やマサキ−トベラ群集が発達する。 このほか、上甑島では須口池、鍬崎池、貝池、海鼠池などの湿地に、シオクグ群集やヒトモトススキ群集、ヨシ群落などの塩沼地植物群落が分布するほか、海岸の砂礫地には小規模の砂丘植物群落も分布する。長目の浜の礫洲上では、砂礫地に発達することが珍しいとされるウバメガシ群落が発達しているほか、連続したツメレンゲ群落や国内最大級のハマナツメ群落が見られる。中甑島では、カノコユリの保護のために行われている野焼き等により、他の2島と比べてススキ草原が多く分布する。 下甑島では、標高が比較的高く、尾岳(604.3m)、谷山(446.4m)、口岳(487.9m)、勝山(391m)等が南北に脊梁をなし、自然林が残存している。瀬尾崎周辺には、ヘゴの自生するタブノキ林があり、ヘゴ自生北限地帯として国の天然記念物に指定されている。 甑島の象徴でもあり、薩摩川内市の市花にも制定されている『カノコユリ』は、全島にわたって自生している。 甑島の植物相は、南方系と北方系の種が入り混じっており、シマイズセンリョウやハママンネングサなどの南方系植物種の北限となっているものや、ホタルブクロやニシノヤマタイミンガサなどの北方系植物種の南限となっているものが見られ、さらに、中国大陸や朝鮮半島に起源を持つダンギクやダルマギクなどの満鮮系植物種も見られるなど、多様なものとなっており、甑島は、植物地理学上重要な地域とされている。 鳥類では、長目の浜において、チュウサギ(準絶滅危惧。環境省版レッドリスト平成24 年(公表)による。以下同じ。)、クロツラヘラサギ(絶滅危惧TB類)、ミサゴ(準絶滅危惧)、ハイタカ(準絶滅危惧)、サシバ(絶滅危惧U類)、ハヤブサ(絶滅危惧U類)、セイタカシギ(絶滅危惧U類)、カラスバト(準絶滅危惧)などが確認されているほか、上甑島東部の属島群はウチヤマセンニュウの繁殖地となっており、ミサゴ、ハヤブサ、カラスバトなども見られる。また、下甑島西海岸の岸壁ではハヤブサ、沖の岩礁ではミサゴの営巣がそれぞれ見られ、鹿島断崖はウミネコの繁殖南限地となっている。 魚類では、上甑島北部の潟湖群において、メダカなどの淡水魚、回遊魚であるオオウナギ、ボラなどの汽水魚、キスなどの海水魚が生息し、湖沼ごとに異なる分布が見られる。なお、貝池には約30億年前のバクテリアであるクロマチウムが生息し、学術的に注目されている。 昆虫類では、甑島固有種であるコシキトゲオトンボのほか、タイワンツバメシジミ- 4 -(絶滅危惧TB類)、アオイトトンボ(絶滅危惧TB類)、クロツバメシジミ(準絶滅危惧)等が生息している。クロツバメシジミは長目の浜や熊ヶ瀬鼻に群落が見られるツメレンゲを食草としている。 海域では、上甑島東部の属島群を構成する松島、筒島、野島周辺海域において、ミドリイシ等のサンゴが発達し、被度50%を超えるサンゴ群集が見られる場所がある。 |
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■自然現象 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
甑島は、東経129度39分〜130度0分、北緯31度37分〜31度53分の間に位置し、沿岸を通る対馬暖流の影響を受ける海洋性の気候である。気象庁の中甑地域気象観測所における年平均気温の平年値(1981年〜2010年)は、18.1度と温暖であるが、冬季は、西側の沿岸では、季節風の影響を強く受ける。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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■文化景観 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
甑島の名前の起源は、甑(蒸し器)型の大岩を甑大明神と崇めたことから始まっているとされており、上甑島ヘタノ串にあるその大岩は、現在も、ご神体として祀られている。日本人が古くから持っている巨岩崇拝と生命を維持するための穀物を蒸す道具である甑に対する信仰とが結びついたものであるとされている。 また、甑島では、夏になると白やピンク色の大きな花を咲かせる芙蓉が見られるが、かつては、この芙蓉の木の皮の繊維を使う『ビーダナシ』と呼ばれる芙蓉布が織られており、現在は、この伝統文化を復活させようとの取組がなされている。 上甑島里町に伝わる十五夜の伝統行事『かずらたて』は、山に入り、葛(くず)の蔓(かずら)を切り出して大綱が作られている。甑島の全域で見られるカノコユリは、かつては観賞用として海外に輸出され、島の経済を支えるなど、暮らしとともにあった花であり、今も島の象徴として大切にされている。このように、人と自然が深く関わってきた暮らしの風景が見られる地域である。 |
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■公園区域 《陸域》 ・里町里、上甑町中甑、上甑町中野、上甑町江石、上甑町平良、上甑町小島、上甑町瀬上、上甑町桑之浦 ・下甑町手打、下甑町片野浦、下甑町瀬々野浦、下甑町青瀬、下甑町長浜及び鹿島町藺牟田の各一部 合計5447ha 《海域》 ・上甑町瀬上地先の全部並びに里町里、上甑町中甑、上甑町江石、上甑町平良、上甑町小島、上甑町桑之浦 ・下甑町手打、下甑町片野浦、下甑町瀬々野浦、下甑町青瀬、下甑町長浜及び鹿島町藺牟田の各地先海面の一部 合計25288ha |
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■史跡名勝天然記念物 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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